2025年02月06日

ビジョン

組織の未来づくりに貢献するビジョン|自社がまとまる「ストーリー」の考え方

起業・経営に役立つ知識

 

企業等の組織にとって、未来を見通した持続的な経営・事業運営は、重要な課題の一つです。
持続的な経営にあたっては、経営陣・管理職・従業員が同じ方向を向き、同じビジョンを共有しているかどうかが問われます。

企業によっては、ビジョンを「数字」で説明するものという考えを持っているケースもありますが、そもそも経営陣・管理職・従業員は働く上で立場が違うため、数字でビジョンを説明されたとしても、それぞれ見えている風景が異なるはずです。
そこで、この記事では、組織の未来づくりに貢献するビジョンをイメージするにあたり、自社で働くすべての人が共鳴できるような「ストーリー」の考え方について解説します。

 

 

組織の未来づくりに貢献するビジョンとは

そもそもビジョンとは、企業の「社会における存在意義(パーパス)」に基づいてイメージした、将来実現していたい理想的な状態のことをいいます。

仮に、企業の社会における存在意義が「日本中から“面倒な経理業務”をなくすこと」だとしたら、それを踏まえたビジョンの例としては「自社AI会計システムの国内シェアNo.1」といったイメージになるでしょう。

ただ、国内シェアNo.1と聞いても、その規模や重大性がよく理解できない社員がいる可能性があります。
そのため、ビジョンを自社の人間全員が共有するためには、より分かりやすく「ストーリー」化されたビジョンが必要になるのです。

先ほど例にあげたビジョンを書き換える場合、例えば「全国各地の経理部門のパソコンに、自社のAI会計システムがインストールされている」状態と説明すれば、多くの人の理解を得られるはずです。

 

 

ビジョンをストーリーで伝えるメリット

ビジョンをストーリー化して自社全体に浸透させると、自社で働く人材全員が「この会社で働くこと=良いこと」というイメージを抱きやすくなります。
小規模な企業が成長し、従業員が集まるプロセスにおいては、少なからず「この会社で働くと(自分や社会にとって)良いことがある」というメリットが求められます。

 

一概にはいえませんが、新卒者が多くの人に名前を知られている大企業で働くケースと、路地裏の一角で細々と経営している企業で働くケースとでは、家族・親族の心配の度合いはまったく異なるものと予想されます。
しかし、たとえ働き始めた時期は小さな企業だったとしても、働き続ける中で企業が大きくなり、自分自身の評価にも良い影響をもたらすことが期待できるなら、路地裏の企業を選ぶ人も少なくないでしょう。

 

人材が、企業の成長の可能性を判断する情報の一つが、分かりやすいビジョンです。
「今後10年で年商10億円を目指す」よりも「今後10年で今ここにいる皆さんの給与を最低30万円増やす」の方が、圧倒的に説得力があるのです。

 

 

 

自社がまとまるストーリー(ビジョン)の基本的な考え方

自社で働く人材を一つにまとめるストーリー(ビジョン)を考える際は、次のようなポイントを押さえてまとめるとよいでしょう。

 

  • 計画とビジョンを分けて考え、最後につなげる
  • 「~だから」でストーリーをつなげる
  • 「目的の達成」を重視し、手段は重視しない

以下、それぞれのポイントについて解説します。

 

 

計画とビジョンを分けて考え、最後につなげる

中期計画など、企業が立案する計画とビジョンは、基本的に分けて考えましょう。
例えば、成長率について力強く語っても、基本的に経営に深く関わっている人にしか刺さらないものと考えられるため、ビジョンは計画と別にして考えた方が説得力は増します。

よって、ビジョンを考える際は、次の流れでストーリーを考え、最終的に計画およびその達成につながるよう構成しましょう。

 

①企業理念
②企業理念に基づくミッション(何をしなければならないのか)
③ビジョン(長期的に見て実現したい状態)
④行動・判断基準(どのような行動・判断によってビジョン実現につなげるのか)

 

 

「~だから」でストーリーをつなげる

先述した①~④の内容を、ストーリーとして1つの線でつなぐためには、キーワードとして「~だから」を使うことをおすすめします。
具体的には、次のようなイメージでストーリーを構成します。

 

①企業理念

経理の残業の原因は、人間に任せておく必要がない“ムダな仕事”にある

だから、

②企業理念に基づくミッション(何をしなければならないのか)

AIを駆使した、経理担当者に“ムダな仕事”をさせない会計システムを全国に広げる

だから、

③ビジョン(長期的に見て実現したい状態)

AI会計システムのシェアNo.1をとり、世の中の人に「AI会計といえば自社」というイメージを持ってもらいたい

だから、

④行動・判断基準(どのような行動・判断によってビジョン実現につなげるのか)

「だから、」

従業員一人ひとりがAI・会計について詳しくなれるよう努力し、成果につなげられる人材になる必要がある

 

上記のようなイメージでストーリーを構成すれば、ビジョンの共有がスムーズになるでしょう。

 

「目的の達成」を重視し、手段は重視しない

ビジョンを考える際は、あくまでも目的の達成を重視し、手段について重視しないことが大切です。
目的が「経理に無駄な仕事をさせない」ことなら、その手段としてAI会計システムにこだわる必要はないのです。

例えば、セミナーで業務効率化の方法を伝えたり、在宅勤務など多様な働き方を実現する方法を模索したりするなど、色々な手段を想定することが重要です。
複数の手段を得ることで、将来的に持続が見込めるような新しい事業を発見することにもつながるはずです。

 

 

まとめ

組織の未来づくりには、全社員が共感できるビジョンが重要であり、そのためには、ビジョンを「ストーリー」化して分かりやすく伝えることが大切です。
ストーリーは、企業理念から始まり、ミッション、ビジョン、行動指針へと、それぞれの点を1本の線でつなぐことにより生まれます。

説得力のあるストーリーによって、多くの人材が自社に興味を持てば、やがてそれは従業員が自社に愛着を持つ理由となります。
自社で働く目的を明確にした従業員は、自社の持続的成長を支える重要な人材となってくれるはずです。