2023年10月04日
海洋DXカンファレンス
「海洋DXカンファレンス2023佐世保」開催
お知らせ、特集・イベント
海洋の今と未来について考えるイベント「海洋DXカンファレンス2023佐世保」が開催されました。海洋領域において先進的な活動をされている企業・団体の方々が事例発表を行い、参加者同士の交流会が行われました。この記事では当日の様子を紹介します。
「さぁ、海の未来の話をしよう。」海洋DXカンファレンス
2023年9月29日に「海洋DXカンファレンス2023年佐世保」が、アルカス佐世保にて開催されました。今回のカンファレンスは「さぁ、海の未来の話をしよう。」というテーマで、海洋関連事業のDXについて国内のさまざまな取り組みが紹介されるイベントです。会場では県内外の関連事業の方や行政などが交流し、ビジネスの新たなつながり作りが行われました。
アルカス佐世保1階の会場には次々と参加者が集い、開始前から名刺交換など活発にお話をされている様子が見受けられました。
イベントは、宮島大典佐世保市長の挨拶、基調講演と続き、休憩を挟んで取り組み事例を7例紹介するという流れです。
宮島市長は「今回のカンファレンスは「海のこれから」について話す素晴らしい試みである」と評価し、記念すべき第1回を佐世保で開催できたことに対し感謝を述べられました。また、佐世保が海を中心にして発展してきた歴史に触れ、現在では水産資源の枯渇、造船業の衰退など、大きな曲がり角を迎えていると問題提起されました。
そこで、2023年3月に佐世保市は「海洋DX宣言」をし、海洋事業のスタートアップベンチャーの支援事業を開始したことを紹介。「カンファレンスをきっかけとして佐世保のみならず、長崎県から海洋産業の先進的な好事例を発信していってほしい」と期待を寄せました。
基調講演
次に基調講演としてお2人が登壇されました。
1人目は、内閣府宇宙開発戦略推進事務局の和田弘人氏です。
和田氏からは準天頂衛星システム「みちびき」の特徴と利活用についてお話がありました。
海洋DXを進める上で、重要なインフラを担っているのが「みちびき」による測位システムです。「みちびき」とは、いわゆる日本版GPSのことで、2018年からサービスが開始されています。
「みちびき」を使うことで、センチメートル単位での高精度の位置情報を測定できます。流通、土木建設、自動運転、農業、海洋など、さまざまな分野でみちびきが利用されているとのことでした。スマートウオッチやカーナビなど、私たちの身近な暮らしでも利用されており、内閣府が把握しているだけでも415以上の製品が既にあるそうです。
今ではそれ以上の製品やサービスが流通しているとのことでした。また、佐世保のオーシャンソリューションテクノロジー(株)が提供している漁業者支援システム「トリトンの矛」で活用されていることも紹介されました。
2人目は国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)の冨井直弥氏です。
冨井氏からは2026年に打ち上げが予定されているSAMRAIミッションについて紹介がありました。
特殊なアンテナを装備した衛星が打ち上げられると、既存の衛星アンテナでは得られなかったような細かな地上の情報を処理し活用できるようになります。この情報をインフラとして活用することで、海洋環境の変化を宇宙から把握でき、持続的な漁業に活かせるとのことでした。最後に「SAMRAIミッションが進むことで、持続的かつ安心・安全な海洋デジタル未来社会の実現に貢献できる」と力説されました。
宇宙事業が日本の産業のインフラとして重要な役目を果たしており、海洋DXにとっては切っても切れない関係であることがわかりました。
事例紹介
基調講演の後は、貴重な事例紹介です。
最初に、NPO法人長崎海洋アカデミーの中野俊也所長、そして池野酒販の池野辰太郎氏が登壇され、それぞれの事業紹介がありました。
県外からも事例紹介が4例ありました。ここでは高知県と横須賀の会社の事例紹介をします。
高知県の事例では、市場のDXを県が行い、漁業者の負担を軽減できた事例でした。これまで手入力、手書きだった魚の仕分け、セリ、仕入れなどのデータをタブレット入力することで業務の効率化が実現できたとのことでした。
横須賀の企業の事例では、マリンスポーツのDXについてでした。ドローンや位置情報デバイスを使い、選手の動きをタイムリーに追いかけモニターに表示するといったサービスの紹介でした。ヨットレースなど、これまで海上の選手の様子がわかりずらかったマリンスポーツも観戦できるようになり、多くの人が楽しめるようになったとのお話でした。
分野がそれぞれ異なりますが、非常に画期的な取り組みをされており、海洋DXの可能性を感じました。
また、佐世保の海洋DXの事例として、オーシャンソリューションテクノロジー(株)が提供している「トリトンの矛」について、代表の水上陽介氏から紹介がありました。
「トリトンの矛」とはいわゆる漁業者支援サービスで、IoT機器を船に設置することで航跡を自動登録し、その情報を活用するというものです。操業データをビッグデータとして構築することで、リアルタイムの正しい資源評価、操業効率化、トレーサビリティなど、スマート水産業を実現させることを目的としています。現在市内はもとより、県外にもサービス提供が進み、海外にも利用が広がっているとのことでした。また水難事故の対策として、受信機を使った水難者の位置情報を把握するシステムも準備しているとのことでした。
今回のカンファレンスの目的として新しいつながり作りがあります。3階ではネットワーキング(交流会)が行われ、参加者、登壇者、スポンサー企業の方が活発に会話を楽しんでいました。
海洋DXの可能性
最後に実行委員会委員長の水上陽介氏からあいさつがありました。
「海に囲まれた環境をいかし、水産業のスマート化、ITが活用されることで、若者の活躍する産業が生まれることを願っている。今回のカンファレンスは新しいつながりを築き、既存の関係を強化するよい機会となった。私たちは新たなアイデアやプロジェクトに向けて大きな前進を果たすことができると感じている」と今回のカンファレンスの意義を語られ、閉幕となりました。
海洋DXカンファレンスは初めての開催でしたが、県内外の多くの方が参加され関心の深さを感じました。事例紹介で新たな気づきや新たなつながりがうまれたことでしょう。今回のイベントは、海洋事業やDX事業に携わる人たちにとって、事業構築のための大きな足掛かりになったのではないでしょうか。
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