2025年08月10日
採用
中小企業に必要な「採用マーケティング」のすすめ|具体的な方法も解説
起業・経営に役立つ知識
一般的に「マーケティング」という言葉を聞くと、自社の商品やサービスの認知度を高め、販売に繋げるための一連のプロセスを想起される方が多いでしょう。
しかしながら近年では、人材を確保するための採用活動においても、このマーケティングの概念を導入する企業が増加傾向にあります。
特に、採用活動に投入できる資源(リソース)が限られている中小企業においては、採用マーケティングの考え方を実践的なレベルにまで落とし込み、活用することが極めて重要となります。
本稿では、中小企業の経営者にとって必要不可欠な採用マーケティングについて、その具体的な方法に触れながら解説します。
採用マーケティングの概要と仕組み
採用マーケティングとは、マーケティングの考え方や手法を取り入れ、効果的かつ効率的に自社の求める人材を確保するためのアプローチをいいます。
より噛み砕いて説明すると、求職者を単なる応募者候補として捉えるのではなく、いわゆる「自社のファン」として確保・育成していくプロセスになります。
消費者行動を理解するためのフレームワーク「AISAS(アイサス)」によると、一般的な顧客が商品を認知してから強固なリピーターになるまでのプロセスは、Webマーケティングにおいて次のような順番になります。
①注意(Attention) | 企業の広告等により、消費者が商品・サービスを認知するタイミング |
②興味(Interest) | 消費者が「こんな商品があるんだ」と興味を抱くタイミング |
③検索(Search) | 商品・サービスについて消費者が自力でリサーチをするタイミング |
④購買行動(Action) | 消費者が納得して商品・サービスを購入するタイミング |
⑤共有(Share) | 自分が購入した商品・サービスについて、消費者が口コミ等を共有するタイミング |
これを採用マーケティングとして解釈すると、次のようなイメージになります。
①注意(Attention) | 企業の採用広告等により、求職者が自社の存在や求人を認知するタイミング |
②興味(Interest) | 求職者が「こんな会社が人材を募集しているんだ」と興味を抱くタイミング |
③応募・選考(Selection) | 求職者が気になる求人に応募し、選考を受けるタイミング |
④採用・活躍(Action) | 応募者が内定をもらい、働き始めて活躍するまでのタイミング |
⑤紹介(Share) | 自社HPやSNSで、企業が優秀な社員のインタビュー等を掲載するタイミング |
採用マーケティングの実践においては、これらのプロセスを踏んで色々な手法を用いることになります。
採用マーケティングを取り入れるメリット
採用マーケティングを自社の採用活動に取り入れるメリットとしては、次のようなものがあげられます。
- 幅広いターゲット(人材)からの応募が集まりやすくなる
- 自社の欲しい人材にアプローチしやすくなる
- 手法最適化による採用コストの低下が期待できる など
人材確保の効果と効率を高めたい企業にとっては、採用マーケティングの質を高めることが重要といえるでしょう。
採用マーケティングの具体的な方法
採用マーケティングの概要が見えたところで、次は具体的な方法をいくつかのステップに分けて解説します。
①現状把握
採用活動を円滑に進め、応募者を増やすためには、自社の強みと弱みを言語化する必要があります。
最低限、次のポイントに関しては言語化し、どんなことを・どのように求職者に伝えたいのかまとめます。
- 自社のビジョン
- 事業内容や製品シェア、ライバル社との比較
- 社風や従業員の性格的傾向
- 採用活動の現状と課題
②求める人材像の設定
採用マーケティングでは、次の2種類の人材像を具体化します。
- ターゲット
- ペルソナ
ターゲットとは、人材の能力をベースに自社が求める人材を具体化したものです。
例えば「不動産管理実務経験3年以上」や「経理(月次決算経験者以上)」といった条件を満たす人材などが該当します。
ペルソナは、そのようなターゲットが備えている思考・性格・ライフスタイル等を具体化したものです。
年齢や現在の職種、年収、行動傾向、転職する理由といった詳細な条件を、一つひとつ言語化していくイメージです。
ターゲット層の「代表的(平均的)なパーソナリティ」がペルソナだと考えると、分かりやすいかもしれません。
③自社認知から入社までの流れを考える
ペルソナ設定まで進んだら、次はそのペルソナ(求職者)が、自社を認知して入社するまでの流れを具体化します。
求人検索エンジン・求人サイト・SNSなど、複数のチャネル(媒体)から接点を持った求職者に対して、どのような形でアプローチをかけるのか、各求職者のニーズも含めリサーチ・検討していきます。
例えば、求人サイトをメインに採用活動を進める場合、求人広告の質にこだわるのか、それとも積極的にスカウトをかけていくのかなど、この段階で大まかな戦略を立てていく必要があります。
コンテンツ等を作成する
主に利用するチャネルが決まったら、求人広告に掲載する文章やSNSに投稿する画像・動画など、コンテンツ等を作成する段階に移行します。
こちらは必ずしも自社で作成するとは限らず、リソースがなければ外注するという選択肢もあります。
PDCAサイクルを回す
採用マーケティングは、自社で主体的にチャネルを選び、効果を見ながら改善策を講じ続けることが大切です。
エントリー率や書類選考通過率といった指標に加えて、コンテンツがどのくらい読まれているのか、求職者が具体的なアクションを起こしているのかなど、複数の観点から分析できる体制を整えましょう。
まとめ
一般的なマーケティングの手法は、主に商品・サービスの販売促進に用いられますが、近年では採用活動にも「採用マーケティング」としてその手法が取り入れられています。
中小企業が求める人材を効率的に確保し、自社のファンとして育成する上で、採用マーケティングは重要なアプローチの一つです。
求職者が企業を認知し、興味を持ち、応募・選考を経て入社、活躍し、最終的に会社を紹介するまでのプロセスを最適化することで、幅広い層からの応募獲得や採用コストの削減が期待できます。
採用活動が思うように進まず悩んでいる企業にとって、採用マーケティングは現状を打破し、採用目標の達成を実現する強力な手段となるでしょう。