2025年03月10日
技術活用
地方製造業の自社技術を活用した製品開発②〜考え方と製品化までのステップ〜
起業・経営に役立つ知識
前記事では、地方製造業が大手・中堅メーカーへの収益依存から脱却するための自社技術の活用方法や成功事例を解説しました。しかし、自社技術の活用方法がわかったところで、実際に製品開発するうえでの考え方やステップを知らないという方もいるでしょう。
本記事では、地方製造業が自社技術を活用して製品化するために重要な考え方と製品化プロセスを解説します。自社技術を用いた製品開発の進め方を知りたい方は、ぜひご一読ください。
自社製品開発で重要な考え方
地方製造業が自社技術を活用した製品開発を行ううえでは、以下の考え方が重要です
- 市場ニーズの把握
- 自社技術の強みの明確化
- Webマーケティングの活用
それぞれの考え方を詳しく解説するため、自社の製品開発の方向性を考えるときの参考にしてください。
市場ニーズの把握
市場ニーズの把握は、自社技術をどのように活用するのかを考える際の出発点です。以下の観点から市場調査を行いましょう。
- 顧客ニーズの把握
- 競合分析
- リスク管理
自社技術を活用できたとしても、顧客が求めていない製品では収益が得られません。顧客のニーズを把握したうえで、要求が達成できる製品を開発する必要があります。
ニーズだけでなく、市場における競合他社を分析することも重要です。他社の製品に対して、自社技術を活用すればどのような差別化戦略が取れるか考えましょう。
ただし、製品開発にはリスクがつきものです。投資コストによる会社の財務悪化や失敗などのリスクを把握したうえで、新規事業・製品開発を行うか判断してください。リスクを低減する方法を考えることも大切です。
自社技術の強みの明確化
地方製造業の製品開発に重要な考え方の一つが、自社が持つ技術の強みを明確にすることです。自社と他社との差別化要素を明らかにすることで、事業・製品開発の方針が決められます。
自社の強みの把握に有効なフレームワークの一つに、SWOT分析があります。SWOT分析は、自社の強み(Strengths)、弱み(Weakness)、機会(Oppotunities)、脅威(Threats)を評価する手法であり、市場での自社技術の強みの整理が可能です。SWOT分析を行うことで、自社技術の特性や市場での位置付けを明らかにできるでしょう。
自社技術の強みを最大限に発揮できる仕様を設計し、製品開発してください。
Webマーケティングの活用
Webマーケティングの活用も、地方製造業が自社製品を開発するうえで重要な考え方です。
Webマーケティングとは、インターネットのプラットフォームやSNSなどを通じて市場ニーズを収集する方法です。Webサイトへの問い合わせやクラウドソーシングによる公募などを活用することで、顧客ニーズの把握や新しいアイデアの創出などに役立ちます。前記事で紹介した高木特殊工業やグリムファクトリーが良い事例です。
Web資源の活用は、顧客との接点を増やすことにもつながります。地方製造業が自社技術を活かした製品開発をする際は、Webマーケティングを有効に活用してください。自社内だけでは思いつかないようなアイデアが得られる可能性があります。
地方製造業が自社製品を開発するためのステップ
地方製造業が自社技術を利用して製品開発するためのステップは、以下のとおりです。
- 市場機会の探索
- 製品コンセプト開発
- 試作品の作製とテスト
- 製品化と市場参入
自社での製品開発に活用できるように、各ステップで行う内容を詳しく理解しましょう。
市場機会の探索
地方製造業が自社製品を開発するための最初のステップは、市場機会の探索です。このステップでは、市場動向や顧客ニーズなどの把握に向けた情報収集を行い、参入可能な市場や分野を探索します。情報収集の主な方法は、以下のとおりです。
- 定量調査
- 定性調査
- 文献調査(デスクリサーチ)
- 観察調査
定量調査では、アンケートやオンライン調査などを通じて数値データを収集し、消費者の行動や意識を定量的に分析します。一方、定性調査は、インタビューやグループディスカッションで消費者の深層心理や意見を探り、顧客ニーズをより深く理解しようとするというものです。
文献やデータベースから情報を集め、市場動向や競合他社の状況を把握するデスクリサーチも重要な方法の一つです。製品の改善点や新たなニーズの発見には、消費者の購買行動や使用状況などを評価する観察調査が有効でしょう。
いずれの方法で調査する場合でも、以下の手順で行うと効果的です。
- 目標設定
- 調査設計
- データ収集
- 結果分析と報告
ターゲットとする領域・顧客を明確にし、適した調査方法を選択することが大切です
製品コンセプト開発
市場規模の探索を終えたあとは、製品コンセプト開発を行います。
製品コンセプト開発は、誰にどのような価値をもたらす製品を提供するのかを明らかにするステップです。主に以下のような作業でコンセプトを構築していきます。
- アイデア出しとスクリーニング
- ターゲット顧客の設定
- 製品コンセプトの確立
例えば、飲料メーカーが新しい健康飲料に関するアイデアを出した場合、健康志向のある消費者をターゲットと設定することで、「体脂肪を減らす効果のあるお茶」という製品コンセプトを確立できます。
製品コンセプトの決定後、マーケティング戦略も策定しましょう。市場規模やポジショニング、販売促進策などを計画し、売上も予測することが求められます。
試作品の作製とテスト
製品コンセプトが決まったら、マーケティング戦略策定と並行して試作品を作製します。試作品を作製することで、テストマーケティングにより以下のようなデータが得られます。
- 試作品に対する顧客の反応
- 製品の安全性や耐久性といった品質
- 市場投入にあたってのリスク
試作品で得られたデータをもとに、製品化に向けた課題を洗い出し、改善していくことが大切です。顧客の反応だけでなく、製造工程や製品機能に問題がないかもチェックしてください。
独自性の高い製品になる場合は、試作品を作製・テストする段階で、特許出願の検討も必要です。新製品に関する特許を出願・権利取得し、後発メーカーによる参入を防ぎましょう。
試作品によるテストを行わず、いきなり製品化して市場投入することは危険です。製品化前に必ず試作品の作製とテストを行いましょう。
製品化と市場参入
作品のテストデータにもとづいた改善が完了すれば、正式に製品の市場投入が行われます。策定したマーケティング戦略に従って、製品を販売しましょう。製品販売と同時に、以下の活動を行うことも忘れてはいけません。
- 販売促進活動
- フィードバックによる継続改善
広告や展示会などで製品の特長をアピールすることで、知名度が上がり、売上の拡大につながります。市場参入すれば、製品に対するフィードバックが明瞭に得られるため、改良し続けることも大切です。
製品化して終わりではなく、顧客のニーズに合わせて継続的に改良しましょう。問題が発生した場合は、迅速に対応し、販売戦略を修正することも重要です。
まとめ
地方製造業が自社技術を活用して製品化するためには、市場のニーズを理解するとともに、自社技術の強みを把握することが重要です。市場ニーズを把握する際は、Webサイトへの問い合わせやクラウドソーシングなどのWebマーケティングも積極的に活用してください。
製品の売上を拡大したり、販売期間を延ばしたりするための活動も忘れてはいけません。販売促進活動や継続的な改善を行いましょう。
著者
カカオムギ
博士(工学)。東証プライム上場企業のグループ会社(製造業)で、研究開発部門のリーダー職として従事。表面加工技術を中心に多数のテーマを担当。担当テーマに関して、社内外で複数の受賞経験あり。