2022年07月20日
第1回アトツギアップデートSASEBO(2022.7.13)
何か新しいことをやっていくためには、一緒に考える仲間や先輩アトツギの存在がとても有意義
特集・イベント
「家業を引き継ぐけどもっと事業を伸ばすためにはどうすればいいだろう」「自分が跡を継がないといけないけど、もっと面白いことやりたいな」そんなことを思っている若手後継者を対象として、日頃の悩みやアイディアをシェア、ブラッシュアップしていくためのコミュニティプログラム「アトツギアップデートSASEBO」(2022.7.13)がVSIDEにて開催されました。
「アトツギアップデートSASEBO」は同じ悩みを持つコミュニティで、日頃の悩みやアイデアをシェア、ブラッシュアップしていくことを目的としています。また最終的に中小企業庁主催の「アトツギ甲子園」に出場することで、自身の事業に向き合い、プロのフィードバックをもらうことで参加者自身と会社が大きく成長できます。
まず最初にお話ししただいたのは山岸さん。ご自身が携わる「ベンチャー型事業承継」とは、家業の有形・無形の経営資源をベースとして、そこに後継者自身の強みを掛け合わせて新規事業や業態転換、新市場参入などの新たな挑戦をしていく新しい事業承継の形。それによって永続的な経営と新しい価値を生み出すということでした。
また「跡継ぎ」というと、これまでは「後を継がなければならない」というネガティブなイメージがありましたが、「アトツギ」ということで後継者が胸を張って地元に戻ってこれる社会づくりをめざしているのだそうです。
また全国の中小企業で後継者不足が課題を解消するために、政府が「アトツギ支援ネットワーク(仮称)」の創設を検討していたり、中小企業庁では全国の中小企業のアトツギが新規事業プランを競うピッチイベント「アトツギ甲子園」が開催されるなど、国も本腰を入れてきているとのこと。また各種メディアでもアトツギへの注目が集まってきているなど、「流れがキテいる」ということでした。
次にお話しいただいたのは糸川さん。糸川さんはもともとシステムエンジニア。ライフワークとして2014年、ITコミュニティ「Code for kitakyusyu」を立ち上げて北九州初のハッカソンを実施した人で、ご自身が青森県で関わったアイデアソンについてのお話でした。
「おもしぇビジネス考えべし アトツギ特化のアイデアノック」と題された2日間のワークショップ。さまざまなアトツギがチームを組んでビジネスプランを考えるイベントで、他人の家業を参考にすることで自分の家業をアップデートできる面白さを参加者の声と共に伝えていただきました。
アトツギが何か新しいことをやっていくためには、一緒に考える仲間や先輩アトツギの存在がとても有意義で、そのためには同じ悩みを持つアトツギの考えを聞くことができるコミュニティが各地に必要だということを話されました。
そして最後は地元佐世保市からの登壇、株式会社オーシャンソリューションテクノロジーの水上さんです。
もともとは株式会社佐世保航海測器社という艦船に搭載される航海・光学機械の保守整備ならびに艤装工事を行う会社の跡継ぎとして生まれたものの、会社の待遇はアルバイトからのスタートだったそうです。現在、佐世保航海測器社とオーシャンソリューションテクノロジーの代表として忙しい日々を送られています。
佐世保航海測器社は保守的体質だったため、新事業立ち上げにおいても当時社長だった父の説得が最大のハードルだったということでした。そのために行ったことは3つ。
1つ目は、さまざまな行政の支援制度や補助金に応募すること。そこで採択を受けることで、国から認められた事業だという実績を積み重ねていったそうです。
2つ前は、実績を積み重ねることでメディアへの出演機会を増やし、その出演が次の出演につながるようを人脈を活用されたということです。NHK「おはよう日本」、TBS「がっちりマンデー!」、テレビ東京「ガイアの夜明け」など有名番組に次々取り上げられたことが当時の社長の耳に入るにつれ、徐々に事業への理解と協力が深まっていったとのこと。
そして最後は国や自治体へ粘り強く交渉し実現した実証実験。こうした活動と実績の積み重ねで、最終的に「NOと言えない環境を作り出した」ということでした。
そして最後は山岸さんと糸川さんから水上さんへの質問を交えたトークセッション。
そこで水上さんは「新しいことを進めていくためには情報発信と行動が大事。自分が動くことで見えてくる壁があるし、批判を受けることでブラッシュアップできる。そのためには嫌われる勇気を持って行動することが大事です」と話され、アトツギを超えた実業家としての信念が垣間見えました。
次回(第2回)の「アトツギアップデートSASEBO」は2020年11月9日開催予定です。アトツギ甲子園エントリーに向けたワークショップを実施します。
市内のアトツギのみなさん、奮ってご参加ください。
登壇者
山岸勇太氏
一般社団法人ベンチャー型事業承継事業戦略統括兼九州エリア責任者
1982年石川県小松市生まれ。実家は建築業を営んでおり、一族全員が大工家系。2005年法政大学工学部を卒業後、NTT西日本を経て2013年福岡県庁民間中途採用枠で入庁。2022年4月より一般社団法人ベンチャー型事業承継。
糸川郁己氏
I.I.(個人事業)代表、Code for kitakyusyu事務局長、(公財)北九州産業学術推進機構(FAIS)ロボット・DX推進センターDX推進担当課長
1980年北海道生まれ。仙台でSEとして就職し、2007年、異動を機に福岡県へ移住。現在は北九州市外郭団体の職員として事業連携および新ビジネス創出を支援。「北九州テイクアウトマップ」の開発や、「北九州市コロナ感染症情報サイト」の立ち上げなどを実践。
水上 陽介 氏
オーシャンソリューションテクノロジー株式会社 代表取締役
2008年艦船の保守整備を行う株式会社佐世保航海測器社に入社、現在代表取締役。
現役漁業者から水産業の現状を聞き、2017年オーシャンソリューションテクノロジー株式会社を設立。
「トリトンの矛」は、操業日誌のデータ化による漁場選定と技術継承、漁獲報告の自動化を目指とともに水産資源の保護・管理による持続可能な水産業の実現を目指す。