2023年06月26日

カスタマージャーニー

カスタマージャーニーとは?〜勘と経験頼みの販促・マーケティングから卒業〜

起業・経営に役立つ知識

 

 

自社の製品・サービスをどういう方法で知ってもらい、どうやって買ってもらえばいいかを考える際に、自分の経験に即して「自分がこう思うから」とか「今はSNSが流行っているから」といった“なんとなく”の感覚頼みになっていませんか。

 

現場の肌感覚というものは大切ですが、“なんとなく”では、例え施策がうまくいったとしても再現性に乏しく、検証・改善ができないということになってしまいます。
本記事では勘と経験頼みの販促・マーケティング企画の現場で、しっかりとした洞察による施策を検討できるカスタマージャーニーについて解説をします。

 

 


 

最初の一歩は「お客さんを知る」こと

 

販促・マーケティング企画の現場ではついつい流行っているからTikTokをやろうとか、自分がいつも見ているフリーペーパーに広告を出そうなど「何をやるか」ということにフォーカスしがちです。しかし、それよりも優先して考えなければならないことは「顧客を知ること」です。

 

魚釣りに例えると、魚がいない場所で釣竿を垂らしても釣れるわけがないのと同じです。では魚がいればいいかというとそうではなく、そこにいる魚が好む餌やどれくらいの水深にいるのかを知ることで、より狙った魚が釣れるようになります。

 

販促・マーケティングでも同じです。自社の商品・サービスを知ってもらい、買ってもらうには、まずは顧客を知らなければならないということの理由はそこにあります。顧客について深く考え、理解しようとすることで、どういう手段を使って知ってもらうのが最適なのか、どういう手法を使えば購入へと至るのかがわかるようになります。

 

では、どうやれば顧客を知ることができるのでしょうか。そのヒントとなるのが顧客接点です。顧客接点とはマーケティング用語で「タッチポイント」とも呼ばれ、企業が顧客となんらかの関係を持つ場所や手段を指します。

 

顧客と関係を持てる場所や手段と言われて、私たちがパッと思いつくのはテレビCMやインターネットなどのメディアですが、接点となるものはすべてタッチポイントになります。
そのため主要な顧客がシニア世代なら、メディアだったらインターネットよりもテレビCMやラジオCMかもしれませんし、接触しやすい場所という観点で考えると病院やゲートボール場などの掲示板などはタッチポイントになる可能性があります。「おばあちゃんの原宿」と呼ばれる東京・豊島区の巣鴨地蔵通り商店街などは商店街全体をタッチポイントと捉えることができるかもしれません。

 

 

 


 

顧客の購買行動を可視化するカスタマージャーニー

 

顧客理解やニーズを把握する手法として有名なのが「カスタマージャーニー」というフレームワークです。顧客が製品・サービスと出会い、そこから購入・契約に至るまでのストーリーを可視化する手法で、そのストーリー(体験)を「旅」に例えています。

 

カスタマージャーニーが重視されるようになった背景として、価値観と接点の多様化が挙げられます。
消費者の価値観は多様化しているうえに、接点が多様化しています。メディアだけ考えても、従来のマス広告(テレビ、ラジオ、新聞、雑誌)やフリーペーパー、交通広告などに加えホームページも公式サイト、口コミサイト、まとめサイトなどがあり、さらにSNSも用途によって細分化しています。SNSなどは種類が多すぎて、何をどうすれば良いか分からないという方も多いのではないでしょうか。

 

また最近ではメタバースやゲーム内広告、タクシー内の広告、スーパーのレジ上にあるデジタルサイネージ内の広告など新しいメディアがどんどん出現し、身の回りのあらゆるものがメディア化している状況です。

 

 

インターネット出現以前は全国的に知名度を上げたいのならテレビかラジオでコマーシャル、地元のお客さんに向けるのであれば折込チラシやフリーペーパーといった風にメディアさえ選んでおけば、顧客を理解する必要は多くありませんでした。

 

しかしメディアが多種多様化した状況では、商品やサービスの認知から購入・消費だけでなく、その後の情報共有(口コミ)まで含めた顧客体験は複雑となっていることは明らかです。しかも売り手が全く知らないところで買い手同士が繋がっているということも少なくありません。

そう考えると顧客のことを理解せずに自分たちの経験や勘だけで「これをやっておけば良いだろう」と決めつけてしまうことは利口ではないことがおわかりかと思います。

 

カスタマージャーニーは、このような複雑な状況のなかで見込み客はどんな人で、どんな場所へ行き、どんなメディアを使っているのか、そして購買に至るまでの行動はどうか、購買後にリピートに至るまでは何を考え、どうしているのかといったあらゆる行動を分析し、可視化し、自社(商品・サービス)のファンとなってもらえるよう、顧客体験のマネジメントをしていくものです。

 

 

施策に手詰まりを感じたらカスタマージャーニーにチャレンジ

 

カスタマージャーニーによって顧客体験を地図上の旅のように可視化して捉えることで顧客体験を効率的にマネジメントし、適切なマーケティング施策を検討できるようになります。

 

もちろん1回のカスタマージャーニーで最適解が見つからず、トライ&エラーが必要なこともあります。しかしカスタマージャーニーはその作成の過程で、これまで勘と経験頼みだったマーケティング施策に新たな気づきをアイデアを与えてくれるものです。

 

販促・マーケティング施策に手詰まり感を感じれおられたら、一度試してみる価値があると思いますので、ぜひチャレンジしてみてください。

 

 


 

著者

イチロー

佐世保市在住。株式会社つむぎラボ(https://tsumugi-lab.co.jp)代表。
総合広告代理店勤務を経て、ブランディングを専門に手がけるつむぎラボを立ち上げ。
目の前の課題解決のみにフォーカスする部分最適の「戦術」ではなく、経営理念にコミットした全体最適のソリューションとしてブランディングによるサービスを提供。新規創業者や市内外中小企業の認知向上、販売促進から求人といった課題に対して、理念開発からテレビCM、ウェブサイトまで幅広い施策を展開。
一般社団法人ブランド・マネージャー協会1級、INPITブランド専門家