2023年09月04日

クリエイターインタビュー

【インタビュー】好きな絵を描いて食べていくということ〜絵作家よしもりたけはる〜

起業・経営に役立つ知識

 

漫画家、アニメーター、絵本作家、イラストレーターなど絵を描く職業はいろいろあります。アニメーターなど会社の業務として描く場合や、独立して自分の好きな絵を描く場合などさまざまな立場がありますが、それだけで生活していくというのはなかなか難しいものです。その世界で成功した方の話というのは参考にはなっても、誰でもが再現できるものでもありません。

 

今回は大学卒業後、会社員としてデザインの業務に携わりながら絵を描く夢を追い続けて活動しているよしもりたけはるさんにイラストレーターのリアルなお話を伺いました。

 


 

ー「好きな絵を描いて食べていくということ」というテーマでお話を伺います。よろしくお願いいたします。

 

こんにちは、よしもりたけはると申します。今回のテーマでもある、絵を描く仕事をしています。と言っても、経済的には会社員の傍ら絵の仕事をやっています。絵の活動するにあたり肩書が必要と思い、今は「絵作家」と称していますが、実はまだ模索中です。(笑)ジャンルとしてはイラストレーションなのですが、自分の描きたい絵を描いていきたい、という姿勢を込めて、そう称しています。
絵作家として活動を始めて10年ほどになりますが、ここ数年でだんだんと多くの絵のお仕事をいただけるようになってきました。

 

ー主にどういった絵を描いているのですか?

 

今は、手描き、シンプルな線画、動物や似顔絵、あたりを好んで描いています。

 

 

【よしもりたけはる|イラストレーション・ファイル】

http://take86.starfree.jp/

 

 

ーなるほど、一種独特な印象を受けます。絵のお仕事と言っても、色々あるかと思いますが、具体的にはどのようなことをされていますか?

 

書籍やWEBページ用のイラストや、ショップサインやロゴイラスト、アイコンの制作などをさせていただきました。こういった用途で使いたいのですがお願いできますか?とお客様からお問い合わせいただく事から、次第に活用いただくシーンが増えていった感じです。

ですが、まだまだ志半ば。いろいろなことに携わりたいと思っています。

 

最近では人物画にもハマっています。ここ数年、コロナ禍の影響でリモートワークやオンライン事業立ち上げが多くなったためか、アイコンやプロフィール画像としてご依頼をいただく事が多くなった気がします。もともと動物を描くことが好きだったため、ペット画もあわせて、喜ばれています!

 

アニメーションや漫画、絵本のように、ストーリーに載せて表現することにも挑戦中しています。小学生のころの夢は漫画家でした。

イラストレーションと言うと、一枚の絵による表現が多いのですが、漫画をイメージすることでイラストに想いや背景をうまく乗せて表現できている気がします。

 

 

ー絵を描くようになったきっかけは何だったんでしょう?

 

きっかけというよりも、小さい時から絵を描くことが好きで、今はその延長にいる感じです。

最初に会社員をしていると言いましたが、大学を卒業後、絵を描くことの延長のような感じでデザインを扱う仕事に就きました。その流れで会社員としても働いています。インハウスのデザイン部署です。(※)

ですから扱う仕事はデザインに限らず、会社の事業全般をサポートする必要があります。それはそれでとても良い経験で、日々勉強させていただいていますが、絵を描くことが好きで仕事に繋げたい、という方向性ではありませんでした。

 

一方で、学生の頃から、自分のWEBページを作って作品を掲載したり、コンテスト等に挑戦したり、絵を描く活動をしていました。少しずつですが、受賞したり、お仕事のお話をいただけたりして、今の絵の仕事につながっています。

 

※インハウス/ 「社内・企業内の」という意味で、外部に委託するのではなく、業務を内製化している状態。この場合はデザインを社外のデザイナーに外注するのではなく、社内でデザインしているという意味

 

 

 

 

ー絵のお仕事で楽しかったことや苦しかったことを教えてください

 

楽しかったことは、お仕事のお話をいただけて、そのお仕事をかたちに残せたことです。これは毎回思うことですね。

 

いろいろな絵の仕事のなかでも、私が軸としていることは「絵を描くことが好きでその延長上に居たい、自分の描きたい絵が仕事となり、お客様に喜んでいただきたい、わたしも楽しく描きたい」ということなんです。そんな中でお声掛けいただけたことはとても嬉しいし、描いた絵で喜んでいただけるともっと嬉しいですし、自信にもつながります。

 

一方で苦しかったことは、たくさんありますが、活動当初の何もない時が一番苦しかったですね。自分の立ち位置やレベルが分からない。やり続けることが正しいのかが分からない。会社での仕事と、絵を描くことが重ならない。そんな中で、絵のコンテストで受賞できたりすると、ちょっとは認められたのかなと、少しは自信を持っていいんだなと、毎回救われていました。

 

仕事につながらなくても評価をいただけると、立ち位置や今後の方向性が多少見えてくるものがあり、ありがたかったです。やみくもにでも、やり続けたことは良かったと思っています。

 

ーどのようにして、絵のお仕事をいただけるようになったのですか?取り組みや工夫などありますか?

 

WEBページを作ったり、SNSから発信をしたり、クラウドソーシング(※)サイトに登録をしたり、展示会やイベントに参加したりと様々です。考えられること、面白そうなこと、こうなりたいなと思えることに色々と挑戦しています。

自分のやりたいこと、描きたい絵を描くことの軸はブレさせたくない。絵を描くこと自体だけでなく、その絵と一緒にどうやったら楽しく居られるかを常に模索しています。

 

そして常に先のことを思い描いて、これだ!と感じたことに取り組んでみる。その積み重ねは、いざお仕事のお声掛けいただいたとき、すぐに対応できるかどうかにつながると思います。いつお声掛けいただけるかわかりませんよね。常に仕事に対しての準備ができているかも大事です。

 

始めの頃は、例えばWEBページを作ったとか、展示会を開いたとか、そのこと自体で満足してしまい、その後の準備ができていませんでした。

それぞれの一歩は次のステップにつながるきっかけ作りなので、もっと先の大きなことを思い描くべきなんだろうなと思います。展示ギャラリーを借りるのにもそれなりの金額を払っているので、単なる実績や思い出作りにとどめるのではなくて、もっと広く知ってもらうために上手に活用すべきだったなと、今となっては反省しきりです。

 

※クラウドソーシング/企業や個人がインターネット上で不特定多数の人に業務を依頼するビジネス形態です。個人のフリーランス向けのサービスとしてはランサーズ(https://www.lancers.jp)やクラウドワークス(https://crowdworks.jp)、ココナラ(https://coconala.com)などが有名

 

 

 

 

ー仕事を進めるうえで、心がけていることはありますか?

 

お客様は私の作風を見て依頼されていらっしゃるので、基本的には描きたいものを描くというスタンスですが、相手の求めるものでないとご満足いただけませんよね。

そのためにはコミュニケーションが大事なんですけども、実は私は人見知りで積極的なコミュニケーションが苦手なんです。(苦笑)

 

最初から的確な答えを引き出す話術もないので思ったこと、カタチにしたことをなるべく早くに相手にお伝えするように心がけています。なるべく早く、描いて提案する、相手の意見を伺う、のやり取りを何度もスピーディに回していくことを大切にしています。

じっくり温めるくらいなら、今手元にまとまったこのカタチをいったん見ていただこうということですね。

 

 

ーいずれは絵の仕事で独立を?

 

はい、今すぐには無理かもしれませんが、もちろん独立したいと思っています。
ただ現在、会社に籍を置いていることで、よしもりたけはる個人としての絵の仕事については本当にやりたいことができている気がします。

それは経済的な心配をする必要がないからです。しかし今の状態では絵の仕事は趣味の延長といわれても仕方ないかもしれません。ありがたいことに少しずつ絵のお仕事も増えていますので、そこは私の気持ち次第だと思っています。今もステップを上がっています!

 

ー最後に、絵を生業にしたい人に向けて一言いただけますか

 

私にとって絵を描くことは、好きなことに向き合えて、誰かに喜んでいただける、とても素晴らしい仕事です。絵を描いている時は、これが本当のあるべき自分という感覚になります。その分、うまくいかないときは悩んだり辛いんですけどね。

 

私の様に副業的に描いている人もいれば、本業でバリバリ描いてらっしゃる方もいてそれぞれですが、好きなことに常に触れ合っていられる状況がまずは大事だと思います。

そこから得られるエネルギーはやっぱりすごくて、普段の生活や絵とは関係ない仕事にも影響します。また逆に周りから得られる刺激が、絵を描くことに自然とつながったりと、良い連鎖が生まれます。

 

好きなことは諦めないで、満足できるまで挑戦する、楽しんで続ける、アンテナを張って色々なことに飛び込む。絵を描くこと自体を生き方として楽しんでいるかどうか、ということなのかもしれません。

スタイルは人それぞれですが、好きなことに楽しく向き合える方法を模索すべきだと思います。

 

ー本日はありがとうございました

 

 

 


 

よしもりたけはる

絵作家/イラストレーション/グラフィックデザイン
シンプルさと、手描きによる温かいカタチを大切にしています。ポストカード、Tシャツ、パッケージ、絵本、壁画など、幅広く展開。TIS公募#18 入選、装画を描くコンペティション#14 審査員賞、ノート展#15準大賞

2023年佐世保市ふるさと納税カタログイラストレーション担当

公式サイト:http://take86.starfree.jp/