
起業にあたって自己資金が十分でない場合、日本政策金融公庫や金融機関から融資を受けようと考えている人は多いかもしれません。
そのためには、創業計画書または事業計画書を作成・提出する必要があります。
創業の時点で融資を受ける予定がない場合でも、事業計画書を作成しておくと、創業当初の目標を振り返るのに役立ちます。
この記事では、創業計画書・事業計画書の基本的な書き方について、それぞれの違いに触れた上で解説します。
創業計画書と事業計画書の違い
創業計画書は、起業・開業時の融資を受ける際に作成する書類です。
これに対して事業計画書は、すでに立ち上げた事業の運営・拡大を目的として、融資や補助金を受ける際などに作成する書類です。
そのため、記載内容がそれぞれの書類で若干異なり、作成の難易度にも違いが見られます。
一般的に、事業の実績がない中で作成する創業計画書の方が、作成の難易度は高いとされます。
創業計画書に記載する項目と書き方
主に創業融資を受ける際に必要な創業計画書は、次のような項目について記載する必要があります。
| 項目 |
書き方 |
| 創業の動機 |
- 創業にあたり自分が抱いていた夢や、起業に向けて努力してきたことなどを記載する
- 利益を出す以外で実現したいこと、周囲の理解があること、自分の意思で創業したことなども盛り込む
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| 経営者の略歴等 |
- 自分の持つ経験・スキルを伝えて審査を受けるため、概ね“3年以上の実務経験”と経営に必要なスキルについて記載する
- 会社員時代の実績をアピールできる場合は、そちらも記載する
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| 取扱商品・サービス |
- 競合との違いやセールスポイントを記載する
- なぜ自社の商品・サービスが選ばれると考えるのか、集客をどのように進めるつもりなのかに触れる
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| 取引先・取引関係等 |
- ターゲットとなる顧客の存在と、そのターゲットを集客できる根拠について記載する
- 仕入先の名称や住所についても記載する
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| 従業員 |
従業員が必要な場合、その人数を記載する |
| 借入状況 |
- 創業者の各種ローン、借入状況について記載する
- 審査時に個人信用情報機関で個人情報をチェックされることを想定して、もれなく記載すること
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| 必要資金・調達方法 |
- 創業において必要な資金と、その資金の調達方法について記載する
- 開業資金の総額における自己資金の割合が十分であること、通帳を見せて自己資金があることを証明しなければならない
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| 事業の見通し |
- 創業後の収支の見込みについて、根拠と合わせて記載する
- 同業者と比較して無理がない計画か、返済と生活費の支払いを両立できるかなどが問われるため、無理のない見通しを記載する
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事業計画書に記載する項目と書き方
金融機関・投資家向けに事業計画書を作成する場合、次のような項目について記載するのが一般的です。
| 項目 |
書き方 |
| 事業概要 |
- 理念やビジョンについて記載する
- 商号・事業所の所在地といった情報のほか、役員構成・取引先・従業員数なども記載する
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| 事業の内容 |
- 自社の事業が「だれに、なにを、どのように」提供しているのか、事業を運営する目的に触れつつ、できるだけ具体的にまとめる
- できるだけ専門用語は使用せず、金融機関の担当者・投資家に伝わるよう記載する
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| 創業メンバー経歴 |
- 創業者のプロフィールのほか、創業メンバーについても次のような情報を記載する
→学歴、職歴保有資格、スキル
- 記載事項は「事業に直接関係するもの」に絞ること
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| 事業の強み・弱み |
- 市場の状況や競合相手の研究を踏まえつつ、オリジナリティにあたる部分を強みとしてアピールする
- 強みだけでなく、弱みとなっている部分にも触れ、その点についての対策も記載する
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| 自社の状況
(競合・市場規模・ニーズなど) |
- 事業の強み・弱みを説明する内容と合致するよう、競合・市場規模やニーズについて記載する
- 国・自治体・関連団体が公表している統計を参照したり、自社独自のアンケート結果を分析内容と合わせて記載したりするのも有効
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| 商品・サービス概要 |
- 事業における取扱商品・サービスを説明する
- 機能・特徴に加えて、利用者がどのようなメリットを享受できるのかについても触れる
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| 販売戦略 |
- 商品・サービスの価格設定、販売場所、宣伝内容などの情報を、実現可能な範囲で提示する
- 過去に経営者等が勤務していた勤務先・取引先・顧客などから受注の見込みがある場合は、そちらについても記載する
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| 資金・収支計画 |
- 事業における資金の調達方法、必要な金額、用途などを記載する(資金計画)
- 事業運営にあたり、収支の長期予測として、事業年度ごとの売上、売上原価、経費、利益を記載する(収支計画)
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まとめ
一般的に、創業計画書は「起業時の融資申請」に、事業計画書は「既存事業の運営・拡大のための資金調達」に用いられる書類という違いがあります。
創業計画書では、創業動機や経営者の経歴、事業の見通しなどが重要なポイントになるでしょう。
事業計画書では、事業概要、強み・弱み、市場分析、販売戦略、資金計画などの記載が求められ、作成にあたっては入念な準備や情報収集が求められます。
どちらを作成する際も、実現可能性・説得力のある内容を意識してまとめることが大切です。