2023年05月22日
社会起業
地方創生に寄与する社会起業【概論とケーススタディ】
起業・経営に役立つ知識
地方で起業するにあたり、現代では「地方創生」の視点を取り入れることが重要です。
日本社会の大きな問題点として、少子高齢化にともなう人口減少があげられますが、地方経済の衰退も問題視されています。
東京圏に人口が過度に集中している状態を是正し、地方で暮らしやすい環境を確保することは、将来にわたり日本の活力を維持する上で大切なことです。
今回は「地方創生に寄与する社会起業」について、その概要や事例等を取り上げます。
地方創生とは?
そもそも地方創生とは、地方活性化の政策の一つです。
2014年に公布・一部施行された「まち・ひと・しごと創生法」の第1条には、以下のような目的が記されています。
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地方創生はローカル・アベノミクスとも呼ばれ、第2次安倍内閣がデフレ脱却に向けて掲げた経済政策「アベノミクス」のうち、民間投資を喚起する成長戦略に数えられます。
地域産業の成長を促し、雇用や消費を向上させることで、地域経済を活性化させることが狙いです。
地方創生が目標とするもの
政府が地方創生を進める理由を、あえて一言でまとめると「地方の強化と安定」と説明できます。
具体的には、人や産業が東京に一極集中する現状を改善して、UIJターンといった「都市部から地方への移動」という流れを作ることがビジョンです。
大学等への進学・就職を目的に東京圏へ転入する10~20代は多く、東京圏では転入超過率が年々増加しています。
これに対して、地方都市の人口は、全国的に減少傾向にあります。
国勢調査の結果によると、佐世保市の人口は以下の通り減少しています。
令和2年国勢調査 | 平成27年国勢調査 | 増減 | |
人口総数 | 243,223人 | 255,439人 | ‐12,216人 |
男 | 115,131人 | 120,198人 | -5,067人 |
女 | 128,092人 | 135,241人 | -7,149人 |
世帯数 | 104,053世帯 | 105,011世帯 | -958世帯 |
※参照元:佐世保市|令和2年国勢調査の調査結果(人口等基本集計)について
昭和60年から令和2年までの、国勢調査人口及び世帯数の推移を見る限り、佐世保市の人口は25万人前後で推移しています。
しかし、今後も同様の人口で推移していくかどうかは不透明であり、基幹産業である造船業の衰退が進み居住者が働き口を失えば、将来的に大幅な人口減につながる可能性は十分考えられます。
地方創生では、ただ人口を集めるだけでなく、地方産業の強化も重要なポイントになります。
既存産業の強化はもちろん、潜在ニーズを見極め、新しい産業を地方でつくり出すことも求められます。
そこで重要になってくるのが「社会起業」の概念です。
地方創生の観点から社会起業を実現するには
社会起業とは、ビジネスを通して社会問題の解決に取り組むことです。
単純にビジネスを成立させるだけではなく、地域や社会で問題になっていることを解決しつつ、なおかつビジネスとして利益を出すことが条件になります。
こういった特徴を持つ社会起業は、一般的な起業よりも難易度が高いと考えられがちです。
しかし、地方創生の観点から考えると、地方が持つ問題に特化することで、解決策が提案できるケースは少なくありません。
例えば、スーパーマーケットが撤退してしまった地方都市・限界集落において、移動スーパーやキッチンカーなどを出店することも、その地域にとって生活に欠かせないものを提供しているわけですから、立派な社会起業と言えます。
また、新型コロナ禍でリモートワークが普及したことによって、地方を離れず大都市圏とコミュニケーションをとり、物理的な距離を問題とせず仕事ができるようになりました。
この点を踏まえ、都市部の企業が地方に事業所を増やし、都心のオフィスを減らすよう動くことも、地元人材の雇用につながるでしょう。
地方創生に寄与する社会起業の事例
実際に社会起業をスタートするにあたり、先に起業を実現した人の例を知ることで、社会起業におけるヒントが見つかるかもしれません。
以下、地方創生に寄与する社会起業について、いくつか事例をご紹介します。
面白法人カヤック
面白法人カヤックは、ゲーム・エンタメ・eスポーツなど様々な事業を展開する、鎌倉に本社を構える企業です。
地域プロモーションやコミュニティ通貨サービスなど、挑戦的な試みも行っており、鎌倉をはじめとする地方都市を盛り上げる仕組みを提案しています。
社員にも鎌倉に住み、鎌倉で働くことを推奨しており、鎌倉・逗子などの開発拠点周辺に住む社員に対して家賃の一部を補助するなど、鎌倉にまつわる制度を運用しています。
また、地域資本主義という独自の考え方を提唱しており、人のつながりや自然・文化にも目を向けている点が特徴的です。
リノベる株式会社
リノベる株式会社の主な事業内容は、マンション・戸建てのリノベーションです。
現代の日本で社会課題となっている「空き家率増加」・「築古物件の増加」を解決する観点から、
不動産再生を軸とした事業を展開しています。
地方では、住まなくなった家の処分に悩む人も少なくなく、中古住宅に新たな価値を提供するビジネスモデルは地方創生の観点から重要です。
また、リノベる株式会社は、ベンチャー企業有志が集い発足した「熱意ある地方創生ベンチャー連合」の立ち上げにも関わっています。
まとめ
地方創生に何らかの形で貢献する社会起業は、地方で暮らす人の暮らしやすさにも直結するテーマです。
地方にとって必要な商品・サービスを提供できれば、継続的な利益が見込めるでしょう。
自社の利益だけを追い求める経営は、決して長続きしません。地方のニーズを汲み取り、ビジネスを展開する意識が、これからの起業には求められます。