2023年09月19日
書評
【書評】ズラシ戦略 今の強みを別のマーケットに生かす新しいビジネスの新しいつくりかた
起業・経営に役立つ知識
出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン 著者:並木裕太 |
「新規事業」
「戦略」
こんなキーワードを聞いて、ワクワクしない人の方が少ないのではないでしょうか?
ですが一方で、こんな恐怖も持ち合わせてはいませんか。
「明日から新規事業やって」と言われたときに、果たして対応できるだろうか?
そんな恐怖を払拭できる、新規事業のセオリーを語った本のご紹介です。
ズラシ戦略の超まとめ
- ズラシ戦略とは、「スキルなどを含めた自社の本質的なアセット(資産)を見つめ直し、新たにビジネスを展開して、これまで異なる顧客をつかまえること」を意味する。
- 顧客から見た新規事業の見つけ方には4パターン存在する。
1つ目は「A)既存の課題に対して、既存の解決策で挑むパターン」である。
これは、解決する課題も使う解決策も同じだが、他産業に進出するパターンを意味する。例えば、ライザップが英語産業に進出した事例が挙げられる。
この場合、「自社のスキル・アセットが他産業のそれよりも優れていること」が成功要因となる。
- 2つ目は「B)既存の課題に対して、新しい解決策で挑むパターン」である。
例えば、ミクシィが「既存の課題=暇つぶしをしたい」に対して「新しい解決策=SNS」で対応した事例が挙げられる。
この場合、「自社がもとから持っているスキル・アセットが差別化要因になり得ること」が成功要因となる。
- 3つ目は「C)新しい課題に対して、既存の解決策で挑むパターン」である。
例えば、TYOが「新しい課題=広告費の確保に苦しむベンチャー企業」に対して「既存の解決策=CM制作スキルを活かして自ら投資」で対応した事例が挙げられる。
この場合、「とにかくスピードを重視して展開できること」が成功要因となる。
- 4つ目は「D)新しい課題に対して、新しい解決策で挑むパターン」であるが、現実的にこのパターンはほぼあり得ない
- 以上の新規事業の機会に対して、企業が参入するためには、
①既存のスキル・アセットを使って新規事業領域に進出する方法
②既存の事業領域に新しいスキル・アセットを確保して進出する方法
の2パターンが存在する。
- いずれの方法を取るにしても、次の4つの検討ステップを踏むとよい。
- 自社が同業他社と比べて優れているスキルやアセットのリストアップ
- リストアップした自社の誇れる強みを活用できる業界を探す
- ずらし先の業界で、そのスキルやアセットに優位性があるのかのチェック
- 実行できる社内の体制を整える
いかがでしたでしょうか。
おそらく、ここまで新規事業についてロジカルにセオリーを導いた書籍は存在しないのではないでしょうか?
世界トップの戦略コンサルティングファーム「マッキンゼー」の日本法人で、最年少役人にまで上り詰めた傑物の底知れぬ思考力が垣間見える良書です。
キャリア戦略にも「ズラシ」戦略は使えるか?
この本を読んでいて気づいたこと。それは「ズラシ戦略は、キャリアにも使える」ということです。
もう一度、この図を見てみましょう。
例えば「既存の事業領域のまま、新規のスキル・アセットを獲得しに行く」パターン。
これは、「社内異動」「同業界での転職」などが挙げられます。
既存の事業領域内で「ズラシ」ているので、万が一新しいスキル・アセットが獲得できなくても、後戻りがしやすいです。
次に「既存のスキル・アセットを使って、新規の事業領域に挑戦する」パターン。
これは、「他業界への転職」が挙げられます。
全く違う業界であっても使うスキルが一緒だと、転職先でも早期に活躍できる可能性が高まります。
これから起業しようと考えていらっしゃる方は、まず現在のキャリアでズラシ戦略を体得し、起業に活かしても良いかもしれません。