2023年09月22日
農業で起業
農業で起業する方法|素人からでもチャレンジできる?
起業・経営に役立つ知識
農業と聞くと、過酷な環境で作物を育てるイメージから、不人気な職種なのではないかと疑う人も多いかもしれません。しかし、実際のところ、若年者の新規就農は増加傾向にあります。
農林水産省の「令和3年新規就農者調査結果」によると、49歳以下の新規就農者は18,420人で、前年に比べて0.2%増加しています。
法改正が進んだことを理由に、農業への参入を検討する個人・法人も少なくありません。
この記事では、そのような背景を踏まえつつ、まったくの素人から農業で起業することを想定して、起業の具体的な方法に触れつつ解説します。
農業で起業する前にやっておきたいこと
これから農業で起業したいと考えている人は、まず「農業ではどのようなことをするのか」について、正しく理解する必要があります。
以下、農業で起業する前にやっておきたいことをいくつかご紹介します。
農業の知識・技術を得る
素人の段階から農業で起業することを考える場合、まずは農業に関する知識・技術を身につけることが大前提です。
農業に関する知識・技術がまったくない状態で農業を始めることは、プログラミング言語を知らずにゲームソフトを作るようなものです。
実際に収納する前に、家庭菜園レベルでもよいので、「作物を育てる」・「収穫する」一連の流れを経験しておくことが大切です。
その上で、以下のような方法によって、農業で利益を出すための方法を学んでいきましょう。
- 農家に弟子入りして技術・知識を身につける
- 民間の農業研修機関、41道府県の農業大学校などに通い農業を学ぶ
人脈を構築する
法改正が行われたとはいえ、農業への新規参入のハードルは高い傾向にあります。
農業は、周囲の農家との連携が大切で、農地選び・苗の選び方・普段の手入れなど、多くのことを先輩から教わらなければ一人前になれないケースが多いからです。
農業法人に就職して、そこで人間関係を構築する選択肢もありますが、手掛けるビジネスは農業法人によって異なりますし、自分がやりたい作業を任せてもらえない可能性もあります。
様々な農家・農業法人を見学して、自分が「この人だ!」と思える先輩や仲間を見つけられるかどうかが、成功の分かれ道になるでしょう。
資金と農地を確保する
農業の技術を身につけたあと、起業において問題となるのが、開業資金の調達です。
就農1~2年目は、慣れない仕事をすることもあり、赤字を想定しておく必要があります。
農機・種苗・肥料・燃料等の確保にかかる初期投資、月々のランニングコストなどを考慮すると、就農1年目で500万円以上かかるケースも珍しくありません。
それに加えて、自分が希望する農地の確保にも時間・手間がかかるため、起業前にまとまった資金を準備しておくことが大切です。
なお、農地の確保に関しては、農地保有合理化事業などの各種制度を活用することにより、不動産取得税控除などのメリットが得られます。
農業で起業する方法
知識や技術・資金を獲得したら、次は「農業でどう起業するのか」を考える必要があります。
以下、主な起業パターンをご紹介します。
生産者として個人で就農する
農業で起業する際の王道パターンとしては、自分で農作物を作り消費者に提供する、個人での就農があげられます。
その場合、稲作・畑作・酪農といったジャンルのうち、どれを選ぶかが問題になるでしょう。
もし、特にこだわりがないのであれば、まずは畑作からスタートするのが確実です。
稲作の場合、収穫は年1回しかチャンスがありませんし、酪農は春夏秋冬365日休みがなく、少人数で現場を回すのは厳しくなることが予想されるからです。
その点、畑作であれば複数回の収穫が可能になり、季節ごとに栽培する野菜の種類を変えることも比較的容易です。
生産回数が増えれば、仮にミスした場合もノウハウを習得しやすいので、失敗した際のリスクを最小限に抑えられるでしょう。
畑作を選んだとしても、最初のうちは数多くの困難が降りかかるはずです。
それでも、自分で作物を育てる喜び、その作物を消費者に提供できる喜びは、農業を志す人にとって非常に大きなやりがいとなるでしょう。
新たなビジネスモデルで起業する
自力で農作物を作るのではなく、農業関連の新しいビジネスモデルの事業を立ち上げるという選択肢もあります。
広大な土地・高額な設備を必要とせず、農作物の生産に比べて低リスクで始められる事業もあるため、就農が厳しい状況でもチャレンジしやすい事業を探すことをおすすめします。
具体的なビジネスモデルとしては、例えば以下のようなものがあげられます。
- 農作物のブランディング
- インターネット通販の仕組み構築
- 農業の6次産業化
特に、6次産業化はビジネスモデルとして大きく発展する可能性を秘めています。
加工品販売・飲食・宿泊と様々な事業を手掛け、複数の事業の柱ができれば、その分経営も安定するでしょう。
テクノロジーの観点からは、ロボット・IT技術を取り入れたスマート農業の導入も魅力的です。
これまで経験と勘に頼ってきた部分を、AI技術等によって可視化するなど、新規参入者のハードルを下げるような提案ができれば、新たなビジネスチャンスにつながります。
参考事例
佐世保市鹿町町に「美しい棚田を残したい」「日本にある「棚田」を未来へと繋いでいく仕組みを創りたい」という思いで設立されたミライステラス(代表取締役社長 前田晴郎)という会社があります。
ミライステラスでは「自給自足のシェアリング」という取組みを通し、棚田に関わる人口をどんどん増やしていきたいと活動をしています。参考にされてみてはいかがでしょうか。
ミライステラス https://miraisterrace.com
まとめ
少子高齢化が進み、離農してしまう農家が増えることが予想される中、日本における農業従事者の重要性は高まっています。
農業経営は決して簡単なことではありませんが、新技術の導入・提供といった新たなビジネスチャンスが生まれやすい環境でもあることから、チャレンジする価値は十分にある分野の一つといえるでしょう。
農業で起業する際は、地域の人脈や既存のノウハウは大事にしつつ、新しい発想を取り入れることが求められます。
就農だけにこだわらず、これまで自分が学んできた知識・経験を活かせると感じたら、ビジネスモデル化できないかどうか検討することをおすすめします。