2024年01月12日

著作権

クリエイターが起業時に知っておきたい著作権|不測の損害を与えない/損害を被らないために

起業・経営に役立つ知識

 

 

はじめに

「複業」「副業」といったような言葉が出てきたように、働き方が多様化しています。
自分が好きなこと、得意なことを仕事としたい、というのが起業の動機の1つです。
デザイナー/カメラマン/ライターといった、創作で生計を立てていきたいと考えておられる方も多いのではないでしょうか。

 

この記事は、ビジネスで心に留めてほしい著作権について取り上げます。
著作権侵害の事例を通じて、創作を依頼する側、依頼される側でなぜそれがダメか、乗り越える方法について解説していきます。

 

 

事例 著作物を無断で使う

「デザイナーAより納品されたパンフレットのデザインデータの一部を、クライアントが他のデザイナーBに無断で渡してチラシを作成した」

 

この事例で、著作権の何が問題となるのでしょうか。
著作権は、著作人格権と著作財産権で構成されます。このケースではそのどちらも論点となります。

 

著作人格権と著作財産権

デザイナーAにとって、他人が勝手に利用できる状態になっていると、デザイナーAが本来得られるはずだった収入が失われます。
これは著作財産権の話です。

また、デザイナーBがデザイナーAのデザインの一部を利用することで、デザイナーAがそのデザインで表現したかった内容が変更されることとなるのです。
これが、著作人格権の話です。

しかし、納品された側は、「対価を払ったのだから、納品物をどうしようが勝手だろう」と考えます。
著作権は目に見えない権利ですので、デザイナーAとクライアントでこのような乖離が発生します。
まず、著作権とはどのような権利か、理解していきましょう。

 

 

著作権とは

著作権の意義

著作権とは、著作者が、他人が「無断で○○すること」を止められる権利です。
著作人格権と著作財産権は、簡単にいうと著作者の心とお金を守るための権利です。

自分が創作したものについて、他人が勝手に利用できる状態になっていると、創作者の利益(心とお金)が侵害され、創作意欲が失われてしまいます。

お金にならないと、それで生計を立てることもできず、起業しようという人もいなくなります。

それどころか、そのような状態が横行していると誰も創作をしようとは思わなくなります。創作がなくなると文化が衰退します。
そのような状態を防ぐため、創作者の権利を保護しようとの目的から、著作権という権利ができたのです。

 

著作権の譲渡

著作人格権は創作者の心の権利ですので、著作者だけが持つことができる権利です。
一身専属権とも言われ、他人に譲渡することはできません。

しかし、お金は別です。
著作財産権は目に見えるお金の形をとりますので、扱いは一般にいう財産と同じです。
一部であったり全部を譲渡したり、相続したりできます。

 

 

 

何が問題となっているか

 

著作財産権の侵害

事例では、著作権としてどう問題となるのか、考察します。
基本的に、他人の著作物を使用する場合には、著作権者の許諾が必要となります。

まず、著作財産権として、デザイナーBに無断で渡す行為は、デザイナーAの複製権を侵害する行為です。

私的利用など、例外的に著作権者の許諾なく、著作物を利用できるケースもあります。
家庭内で仕事以外の目的のために使用するといったケースは、著作物を自由に利用できます。しかし、事例では、業務上での利用ですので、該当しません。

複製権とは、著作物を印刷、写真、録画などの方法で再製する権利です。
無断で複製されない権利を害し、本来デザイナーAが許諾料等で得られるはずだった収入を得る機会を奪った、といえます。

 

著作人格権の侵害

著作人格権としては、同一性保持権を害しています。
無断で、著作物の内容および題号(タイトル)を改変して利用されない権利です。

著作物が無断で改変される結果、著作者の意に沿わない表現が施されることによる精神的苦痛から救済するために設けられています。
事例では、デザイナーAのデザインの一部を流用してチラシを作成しています。
チラシには、デザイナーAの表現が残っているため、同一性保持権を侵害しているのです。

仮に、デザイナーBがデザイナーAのデザインの一部を流用したとして、結果として元のデザインの表現が一切残っていない場合もあります。
その場合は、もはや別個の著作物が創作されたとして、同一性保持権の問題とはなりません。

 

 

著作権侵害とならないための契約

著作財産権の移転

事例にて、著作権侵害とならないために、どのような方法があるでしょうか。
まず、デザイナーAとクライアントとで、著作財産権が移転していないことが問題でした。

著作権は、著作物を創作した時点で自動的に発生し、その取得のためになんら手続きを必要としません。事例のクライアントにとって、自身が対価を支払ったと立場であるとしても、自動的に著作権が得られるわけではないのです。

まず、クライアントは、デザイナーAに依頼する段階で、どの時点で著作財産権が譲渡されるか協議をすることが必要です。例えば、納品時に著作財産権も移転すると定義し、契約書に記載をして締結することが必要です。

デザイナーAにとっては、納品時にデザインの著作財産権がクライアントに移転するので、納品後別の仕事に使うことはできません。デザイナーAは、著作財産権の移転を考慮して対価を設定することが可能です。

著作人格権についても考慮が必要です。

 

著作人格権の不行使合意

著作人格権についても、契約書にて対応することができます。
著作人格権は、一身専属権ですので、デザイナーAからクライアントへ移転することはありません。

しかし、デザイナーAにとっては、自分の権利ですので、その権利を使わない(=不行使)こともできます。契約締結時点で、著作人格権については行使しません、とあらかじめ合意しておくこともできるのです。著作人格権の不行使合意があると、クライアントは著作人格権を行使されるリスクを負わずに済みます。

デザイナーAにとっては、著作者の意に沿わない表現が施されることによる精神的苦痛を負う覚悟で、その対価を設定することも可能です。
また、そもそも契約は対等な立場で締結するので、嫌であれば合意をしないことも可能なのです。

 

 

著作権で生活を守る

 

法律で保護されている権利

創作で生計を立てていきたいという人にとって、著作権は生命線です。
契約書を交わさずに口約束で仕事を受け、その結果将来得られる収入が絶たれたり、意に沿わない改変がなされ、精神的な苦痛を負う事態は避けたいものです。

また、仕事を依頼して、成果物が納品された側からすると、その利用の過程でいざ著作権侵害とされると、民事上・刑事上の責任を負う恐れが生じます。
著作権侵害は犯罪であり、被害者である権利者が告訴することにより侵害者を処罰してもらうことができます。

刑事罰としては、以下のように定められています。

 

  • 著作権、出版権、著作隣接権の侵害は、10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金
  • 作者人格権、実演家人格権の侵害は、5年以下の懲役、または500万円以下の罰金

 

「懲役刑」と「罰金刑」は併科されることがあります。

著作権は法律で保護されている権利です。そのため、侵害した側、侵害された側はどちらも大変なダメージを負います。

 

まとめ

事業が被るダメージを未然に防ぐため、著作権が絡む取引時には契約書で、成果物の著作権の帰属についても規定して締結することを強くお勧めします。
創作を依頼する側、依頼される側ともども、取引のみならず、将来の生活に関わってくる事柄です。
自分だけではできないという方も、行政書士など専門家の力を借りつつ、リスクを回避して著作権を活用していきましょう。

 

著者

中島 進

日行連登録番号:19262281、大阪府行政書士会会員番号:7872、中島進行政書士事務所(https://about.nakajima-gyosei.jp/)代表、著作権相談員

企業を専門とした契約書類、事実証明書類の作成が専門。
企業における膨大な契約書の作成又は点検、事実証明書の作成や、公証役場に書類をお持ちして公正証書化するための手続きの代理を行う。
一方で、IT技術/AI技術のエンジニアとしての経歴を持つことから、SaaSの提供を行う企業、SES企業など、IT業界の法務の相談を受けることが多い。
著作権は企業においてレピュテーションリスクにつながりやすい。また、デジタル化・ネットワーク化の急速な進展に伴い変化が著しく、企業に与える影響が大きい分野であるため、日々研鑽を積んでいる。