2024年01月18日

経営手法

デザイン経営とは? │ 今注目される背景や実践方法

起業・経営に役立つ知識

 

 

2018年に特許庁が「デザイン経営」宣言を発表し、国をあげて「デザイン経営」の推進を図っています。
とはいっても、デザイン経営という言葉にまだ馴染みのない方もいるかもしれません。この記事ではデザイン経営について簡単に解説していきます。

 

 

デザイン経営とは?

「デザイン経営」について特許庁のHPでは次のように定義しています。

 

「デザイン経営」とは、デザインの力をブランドの構築やイノベーションの創出に活用する経営手法です。その本質は、人(ユーザー)を中心に考えることで、根本的な課題を発見し、これまでの発想にとらわれない、それでいて実現可能な解決策を、柔軟に反復・改善を繰り返しながら生み出すことです。 引用元:特許庁

 

つまり、デザインの力を経営に取り入れていく経営手法なのですが、そもそも「デザインの力」とは何でしょうか。

デザインの力とは、デザイナーが仕事をする上で用いる手法や思考法のことを指しています。いわゆるデザイン思考と呼ばれるもので、サービスを受ける側の視点から出発し、ニーズを捉えていく考え方です。

 

デザイナーはまず顧客やユーザーの立場になってデザインを考えたり、発想を得たりします。また企業のポリシーや思いなどをわかりやすく伝えるのもデザインの力です。
こういったデザインの思考法を経営に取り入れることで、顧客に響くブランディングやイノベーションが実現できるとしているのです。

 

 

デザイン経営が注目される背景

それではなぜ、国はデザイン経営を推進するのでしょうか。その背景には、日本企業の競争力の低下があります。
2018年に発表された特許庁の「デザイン経営」宣言では、日本は「世界のメイン市場としての地位を失った。」と言及しています。その原因として日本の企業が時代の変化に対応できなかった点があげられています。

 

現代は情報にあふれ、似たような製品やサービスが多く販売され、差別化が難しい時代です。このような情報過多でコモディティが進む社会では、消費者は質や価格に加え、企業の発信する「ストーリー」や「共感」といった体験を大切にするようになりました。USP(Unique Selling Proposition)からMSP(Me Selling Proposition)に時代は変わったといわれるように、今は「何を売るか」より「誰が売るか」にシフトチェンジしたと言えます。

 

このような消費者の価値観の変化に対応し、成功しているのがデザイン経営を採用している企業です。宣言では「世界の有⼒企業が戦略の中⼼に据えているのがデザインである」とし「⽇本では経営者がデザインを有効な経営⼿段として認識していない」と指摘しています。
要するに、日本の企業が競争力を上げるために、デザイン経営を取り入れることが課題とされているのです。

 

 

 

デザイン経営の実践方法

デザイン経営と呼ぶためには、①経営チームにデザイン責任者がいること、②事業戦略構築の最上流からデザインが関与することの2つが必須です。

 

①のデザイン責任者とは、顧客起点で考えられ、ブランディングのための業務プロセスを具体的に構想できる人を指します。

 

②に関しては、デザイナーが経営トップと同等の配置で事業戦略に参加することを指しています。日本の企業でよく採用されているのが、ウォーターフォール開発と呼ばれている、上流から下流へ一方向に流れていく開発です。この開発の場合、デザイナーは下流のプロダクトの時点で初めて参画することになります。

 

一方、デザイン経営で求められている開発はアジャイル開発と呼ばれているものです。これはデザイナーが企画立案の時点から参画し、ユーザーの視点からニーズを捉え、実験を繰り返して開発を進めていく方法です。
ほかにも、デザイン経営推進のための組織設置や、人材育成などがあげられます。

 

 

デザイン経営の効果と実践例

デザインへの投資を行う企業について研究調査によると、イギリスの企業はデザインに投資をすると4倍の利益を得られると発表しています。
また、三菱研究所の実態調査によると、デザイン経営に積極的な企業ほど「売上増加率」「従業員、顧客から愛される傾向」が高いことがわかっています(三菱総合研究所)。
たとえば、デザイン経営を採用して成功している企業で有名なのがアップルやダイソンです。日本企業でもパナソニックなどの大企業だけでなく中小企業でも成功事例があるので少し紹介します。

 

佐賀県有田町の貼箱メーカー株式会社一新堂は、デザイナーに企業のビジョンなど会社のありかたそのものを一緒に考えてもらい、新しいデザインの貼箱を開発しました。2018年にはグッドデザイン賞を受賞し、さらにSDGsの観点も含めた新商品は2020年京都デザイン賞を受賞。コロナ禍であっても売上が拡大しているそうです。(参照元:中小企業のためのデザイン経営ハンドブック

 

もう一つ紹介するのは、微生物による発酵の力を利用した商品を開発する北海道の会社です。2代目継承後、商品のパッケージデザインの刷新をしようとアートディレクターに依頼。アートディレクターを代表取締役と同じ配置にし、一貫性のあるデザインを発信していきました。その結果、ブランディングに成功。5年で売上を70%以上伸ばしました。(参照元:中小企業のためのデザイン経営ハンドブック2

 

 

まとめ

デザイン経営について簡単にご紹介しました。デザイン経営を実践するには経営トップの意識改革などさまざまな壁もあるかもしれません。しかし、デザイン経営は世界のトップレベルの企業で採用され、優位性が確立されています。既存の経営で伸び悩みを感じているなら、デザイン経営に取り組んでブランディングとイノベーションを実現していきましょう。