2023年09月10日
特許の重要性
ビジネスにおける特許取得のメリット|モノづくりで世界と戦うために
起業・経営に役立つ知識
造船の街として古くから発展してきた佐世保は、造船以外の分野でも、独自の技術を持つ企業が数多く存在しています。モノづくりの分野を究めるにあたって、佐世保は魅力的な環境といえるでしょう。
ところで、モノづくりビジネスを順調に展開するにあたって、軽視してはいけないものの一つに「特許」があります。
この記事では、佐世保から世界を目指す中小企業向けに、ビジネスにおける特許取得のメリットをご紹介します。
特許(特許権)についておさらい
モノづくりに携わる人にとって、特許は比較的身近なものですが、詳細について知らない人も少なくありません。まずは、そもそも特許とは何なのか、簡単にご紹介します。
特許権とは、これまでに世の中になかったアイデア・発明を保護するための権利です。特許権を取得すると、権利者はその技術を独占的に使用でき、出願日から20年間権利は保護されます。
特許権により保護される発明は、大きく分けて以下の3種類です。
- 装置やプログラムなど(物の発明)
- 測定・分析の方法など(単純方法の発明)
- 薬品・食品の製造方法など(物を生産する方法の発明)
また、特許権は産業財産権の一つであり、他の産業財産権としては以下の権利があります。
- 実用新案権(物品の形状・構造・組み合わせについての考察を保護する権利)
- 意匠権(工業デザインを保護する権利)
- 商標権(ネーミング・ロゴマークなどの商標を保護する権利)
企業が特許を取得するメリット
自社で特許を取得することにより、具体的にはどのようなメリットが期待できるのでしょうか。以下、主なものをご紹介します。
コピー品の流出防止
特許は、登録した技術を独占的に使うことを認める権利のため、仮に他社が自社に無断で模倣品を販売している場合、権利者として相手を訴えることが可能になります。
特許権を侵害すると、訴訟リスク・高額な賠償金の支払いといった問題が生じるおそれがありますから、多くの企業は特許侵害を避けようと動くはずです。
特許を出願して認められれば、少なくとも出願してから20年間は、安心して自社の商品を製造・販売できます。
事業停止リスクを少なくする
特許を取得しておくと、同業他社が類似した技術を使って商品を作っている場合に、特許侵害であると訴訟することができます。
また、同業他社から「その技術は我々の特許を侵害しているため、事業を停止するかライセンス料を支払ってください」と訴えられるリスクも減ります。
特許における訴訟リスクを放置しておくと、後々になって大変な事態を招くおそれもあるため、大事な技術こそ特許の取得はスピーディーに行うことが大切です。
かつて、切り餅を製造・販売している企業の間で、大規模な訴訟問題が生じたことがあります。
当時業界最大手だったA社は、B社が先に特許出願していた技術について訴訟を起こされてしまい、B社よりも早く商品を市場に投入していたにもかかわらず、賠償や製造・販売の禁止、製造装置の廃棄など、厳しい結果を受け入れざるを得なかったのです。
特許権は、出願日よりも前の段階で、世の中に公開されていない発明に対して有効です。もし、B社よりも早くA社が特許を出願していれば、このような事態にはならなかったかもしれません。
知名度・信用度の向上
自社が画期的な特許を取得することで、業界の枠を超えて自社の技術力をアピールすることが可能になります。
一度登録された特許は、特許庁のデータベースで確認できるため、これまで取引のなかった企業・大学等が興味を持ってくれたら、新たな研究・開発に着手することになるかもしれません。
各種メディア等に紹介されれば、高い技術がある企業として、佐世保内外で高い信用を勝ち取りやすくなるでしょう。
資金調達にもポジティブな影響をもたらすほか、消費者に安心感を与えることにもつながります。
ライセンス収入が得られるチャンス
自社で取得した特許につき、他社が使用したいと申し出てきた場合、ライセンスとして貸与し収入を得ることができます。
上手く運用できる特許が得られれば、本業の収益を上回るライセンス料を得ることも不可能ではありません。
ただし、ライセンス料を生むに至る特許の割合は少ないため、特許によるライセンス料だけを当てにするのはリスキーです。
特許の取得は重要ですが、ビジネスモデルに関しては、あくまでも本業の事業を中心に組み立てることが大切です。
特許出願にあたっての注意点
特許を取得するメリットは大きいものの、出願にあたっては、いくつか注意すべき点もあります。
以下、主な注意点をご紹介します。
【出願=権利取得】ではない
特許は、出願すれば確実に権利が取得できるわけではなく、いくつかの条件を満たしている必要があります。
新しい技術であることはもちろん、産業への活用は可能かどうか、既存の技術と比べて進歩しているか、類似技術の出願はないか、様々な観点からチェックされます。
せっかく新技術の特許を出願しても、他に誰かが考えているような技術の場合、権利を取得できる可能性は低くなります。
逆に考えれば、特許を無事取得できるということは、それだけ大きなアドバンテージになるのです。
海外への出願も忘れずに
日本の特許庁に申請して権利を得ても、それは基本的に日本国内だけで通用するものです。
外国で自社の発明を守るためには、海外諸国の特許庁に出願して権利を獲得し、権利行使ができる体制を整えることが大切です。
現段階では海外への展開を考えていなかったとしても、自社にとって重要な特許であればあるほど、海外展開をどうすべきか考えることは重要になってきます。
ただ、海外での特許取得は日本に比べてお金がかかるため、費用対効果を十分に健闘してから判断しなければなりません。
まとめ
特許を取得することは、それ自体が利益につながるチャンスを秘めていますが、自社の評価を高める効果も期待できます。
世界に向けた情報発信が容易になった現代において、独創的な技術は注目されやすくなっているため、モノづくりを手掛ける企業は、規模の大小を問わず「特許を取ることに対して敏感になる」必要があるでしょう。